九州ローカルバス旅時刻表

五島地区のバス旅

 五島とはどこの島でしょう? 正解は、福江島、久賀島、奈留島、中通島、若松島で、5島。そのうち、上五島といえば、中通島、若松島の2島を指します。奈留と久賀をすっとばして宇久島と小値賀島を加えて5島と思いがちですが、後者の2島は平戸諸島に属し、五島には入りません。そもそも郡も違っていて「五島」は五島藩に由来する南松浦郡、小値賀・宇久は平戸藩(正確に言うと中通島の北魚目あたりから平戸藩だったのですが・・・)に由来する北松浦郡となります。まあ、でも当サイトでも、この二島もふくめて五島地区としてご案内します^^;
 さて、博多から五島へのアクセスとして便利なのが野母商船の五島行き夜行フェリー。中距離航路としては破格の船内設備を誇り(さすがに食堂はなくなってしまいましたが)、お一人の場合は2100円のグリーン寝台がおすすめ。カプセルホテルみたいな形状で一ベットごとにテレビまでついており、船内中央部にあるためいちばん揺れません。二人だったらツイン5000円(一人でも5000円払えばOK)がいいかな。それなりの広さの個室になり窓がついて外も眺められますが、そのかわり船体動揺時には揺れます。なお、宇久・小値賀島は早朝到着となりますが、待合所に枕・毛布などを備えた仮眠室があり日が昇るまで仮眠できます(野母商船利用客専用のため、朝になったら閉鎖されます)。博多港出港は23時45分ですが、乗船は2時間前の21時45分からできます。

福江島

 港や空港に着いたら案内カウンターにいつでもバスの時刻表が山積みされていますので、まずそれを入手しましょう。多くのバス会社がフリーで訪れる観光客をターゲットにすることをあきらめて、ふらっと訪れると時刻も路線も案内がなくてわからないというところが多い中、この五島バスの時刻表大量配布大作戦はありがたい限りです。定期観光バスも撤退するところが多い中がんばっており「2名以上の申込みで運行」というのもスゴイ。(申し込みは前日までに0959-72-2173)なお、待望の1日乗車券1000円が(たぶん)2015年から発売開始されました。(紙媒体での情報発信は得意なんですが、何故かバスの公式サイトは系列ホテルのURLにぶら下がっています^^;)
 島内には、「臨時停留所」という不思議なバス停がいくつもあります。臨時といっても、だいぶ前から通年設置されているようで、ちゃんと案内放送に入ってますし運賃表示器に表示されます。どうも、バス停の新設要望があるたびに、「臨時停留所」という名称で設置していったもののようです。近いところでは、本(?)バス停から、100mぐらいのところに臨時バス停があったりします。いっとき正規のバス停に格上げされて減ったのですが、ちょびっとずつまたもや増設中。
 島の中心部の二本楠バス停は乗り換え用のターミナル(といってもたんなる駐車スペースがあるだけで、乗車券の販売窓口はない)になっており、富江、岐宿、荒川、福江、玉之浦方面の5台のバスが連絡のために並んで停車するのは大都市級の迫力(?)だったのですが、2006年のダイヤ改正で岐宿~富江線が大幅に減便となったので乗換え可能なダイヤは大幅に減ってしまいました。
 なお、全国的にも注目されていた、福江地区で商店街が買い物客のために自前でコミュニティバスを走しらせる取り組みは、2021年9月末に五島市乗合タクシーに転換され、歴史を閉じました。

久賀島

 五島のうちの一島に数えられながら、早くに福江市に合併してしまったためにいちばん地味な島。
 まず港にはバス停がない。バス停がないので時刻もわからない。やってきたワゴン車の車内には貼ってあるけど・・・。
 私が訪問したときは蕨までの路線はまだなく、乗合タクシーを中心集落の久賀で下車して、真ん前の久賀タクシーの営業所に声を掛け、旧五輪教会の入口までタクシー移動。ここからは登山道のような道を徒歩ですすむことになります。たどりついたところは集落と呼んでよいのかわからない2軒の家と旧五輪教会、新五輪教会がある場所。しばらくすると郵便配達の方がやってきたので、地図に載っている久賀集落に抜ける山越えの道を尋ねると、もうとうの昔には廃道になったとのこと。昔はその道を往復1時間かけて歩いて配達に来ていたそうで、「あそこには○○さんの家があった」「こちらには□□さんの家があった」と指さして教えてくれたのですが、そのさす方向にはただ木が繁っているばかり。
 さきほどタクシーを降りた地点まで戻ると、シスターさんたちとすれ違いました。島では訪問介護サービスを教会が主体になってやっているそうです。そのまま蕨の集落まで歩いていると、先ほどのシスターさんが乗った車が横に停まり、「乗って下さい」と声を掛けられました。途中の牢屋の窄で降ろして下さいと頼み、「施錠してますからよければ教会に戻って鍵を取ってきましょうか」という申し出を、謝辞を述べて断わり下車。しばらく見学したのち再び歩き出すと、ちょうど国会議員の集会があったらしく警備のパトカーが停まって「どういう用事でこの島に来てるんですか」・・・。
 そんな外来者がめったに訪れなかったこの島は、世界遺産で注目を集める今ではすっかりかわってしまったようです。旧五輪教会の見学は予約制になり、福江港からツアーの高速船が直接五輪に乗り付けるようになったとか・・・。もうあの、もの悲しさを秘めた中にたたずむ天主堂とは会えないのでしょうね。

奈留島

 昔はこの一島で奈留町を形成していました。ヤツデの葉っぱのような形をした島の狭い道を、時速20km程度の自転車のような速度でバスが走り回っています。
 数十年前の三月末に訪問したときは、島内の小・中・高の先生の離任式と重なっていて、見送る生徒・学生とその家族でどこに住んでいるのかと思うほどターミナルは人で埋まってました。何百という数で縄のようになった紙テープがちぎれて船が出航していく様は壮観。高校生がつぎつぎ防波堤にたってエールを送った後、部活の顧問の先生だったりすると、港の出口まで泳いで船を見送るために、部員が次々と海に飛び込む。その日にたまたま出くわしただけの私の手にも、いつのまにか渡された紙テープが握られていました。島内の小中高がひとつに統合された今でもあの光景は年度末に見られるのでしょうか・・・。
 博多と五島をむすぶ野母商船のフェリー太古は、奈留も含め、途中寄港する港は船の新造にあわせてすべて大きく作り替えられています。トンボロが名勝となる前島行きの渡船(2016年から予約運航になってしまいました)は、以前の旧奈留港(浦桟橋)から出ていますので歩いてフェリーターミナルから10分程度離れています。

中通島・若松島・漁生浦島・有福島・日島

 中通島というのは、県外者にはなじみのない名前ですが、これが通称「上五島」の本島になります。複雑に入り組んだ島ですが、島内を縦走する国道384号は比較的海にそっているので、眺めが楽しめます。とくに郷の首~白魚の間は、対岸の若松島やその間に点々とみえる小島が、海の情景を引き立たせてくれます。市販の時刻表には載っていませんが、福江と土井の浦・若松・郷の首をむすぶローカル航路である五島旅客船もルートに組み込むと変化が出ます。
 上五島の旅のテーマといえば、教会めぐりでしょうか。規模は小さいながら、・・・いやそれだからこそただよう趣は、上五島めぐりに欠かせません。神社だとどこにもあるんで、小さい神社だと「な~んだ」といった感じになってしまうんですが、教会というと「じ~ん」と来てしまいますね。八百万の神様、ごめんなさい。
 島の最北端、津和崎訪問もオススメ。本当に泳いで渡れるばかりのところに野崎島の舟森の集落跡が見えます。(でも素人目にもわかるぐらい増水した川のように潮の流れが速く、泳ぐと確実に流されて死にそうです)人も少なくてお気に入りの場所です。
 海水浴場といえば、有川の蛤浜が有名ですが、奈良尾の高井旅もなかなかでした。こじんまりとした旧奈良尾町営のコテージがあり、小さな食堂まで営業しているので海でゆっくり一日を過ごしたい方にはオススメだったのですが、町が合併した後、管理が急速に悪化。コテージに備え付けのノートには、かつては東京からの旅行者の感激のメッセージもあったのですが・・・。
 なお、奈良尾港の真ん前の高台の上に、奈良尾温泉があります。車だと遠回りですが、港から登っていく遊歩道(入口がわかりにくいのですが)を行けば10分程度で着きます。
 また、若松島、漁生浦島、有福島、日島は現在架橋されており、中通島からバスでむかうことができます。旧若松町時代は、町営渡船と町営スクールバス(混乗で一般利用可)が島中を巡っていたのですが、架橋と道路整備によりあんなにたくさんあった渡船は全廃、つい数年前まで初乗り40円で乗れた町営スクールバスも西肥バスに委譲されて消滅してしまいました。民間のバスが廃止になって町営の代替バスが走るのが一般的なのですが、ここではなぜか逆さまです。まあ、おかげでSUNQパスで乗れるようになった訳ですが^^;

小値賀島・宇久島

 さて、まずは小値賀。おぢかアイランドツーリズムといえば、グリーンツーリズムの全国トップランナーです。サライなんかにも特集が組まれたりして、古民家ステイはまさに福岡はスルーして東京ターゲットのお値段。ちょっとそこはパスして、野崎島に泊まりましょう。小値賀港につくと、おぢか島旅コンシェルジュが一切の旅のお世話をしてくれ、野崎島での宿泊、バーベQ、魚釣り、すべて手配済み(要事前予約)。お支払いを済ませて渡島するだけです。旧野崎小学校を改築した宿舎を遠巻きに眺める野生鹿たち、青い海、誰かが鳴らす旧野首天主堂の鐘の音・・・。
 あっ、肝心のバス旅の話が抜けてますね。小値賀交通は、西肥バス撤退後に第三セクターで作られたバス会社です。小さい小値賀島内をくまなくカバーしており、縦横無尽です。さらに小さな離島たちへ渡る小値賀町営の離島航路(大島・六島・野崎島・納島行き)も出ていますので、島めぐりもいいかも。
 さて、一方の宇久観光バスは、やはり西肥バスの後釜の第三セクター。バスは2台で運転手も2人、名目上の社長は町長ですが、実質の企業体としての管理者はバスの運転手のうちの1人。実質の「社長」が運転するバスで、島巡りとはオツなもの? ただし、観光スポット(=眺めがよい=人家がない)となる島北西部はずいぶん昔に路線撤退しており、「観光」と社名にはついているが(西肥バス末期に「西肥観光バス」という子会社が運営をしていた名残)、このバスに乗っても「観光旅行」にはなりません。ちょっと歩くことが必要になります。
 2つの島は市販の時刻表に載っている航路の他、宇久神浦港~寺島~小値賀町の佐世保市営交通船でも結ばれています。こちらのルートを使ってみるのも面白い。そうそう、宇久町は佐世保市と合併という離れ業をやってのけて今は佐世保市なんですよ。

五島地区の時刻表

交通事業者名 主な自治体 主な結節点となる駅・港・バスターミナル(BT) 主なローカルバス旅 観光地
五島バス
五島市 福江港(博多・長崎・若松島・中通島・椛島・黄島・赤島・久賀島行き)、福江空港、(富江=)富江港(黒島行き)、(船着場=)奥浦港(田の浦港[久賀島]行き) 定期観光バス、鐙瀬熔岩海岸、福江城、堂崎天主堂、荒川温泉、福江温泉、大瀬崎灯台
五島市乗合タクシー ※市民以外利用不可  五島市(福江地区・岐宿地区・奥浦地区・富江地区)
福江商店街巡回バス 五島市福江 2021年9月、五島市乗合タクシーに転換されました
三井楽半島バス
五島市(旧三井楽) 三井楽[五島バス]、貝津港(嵯峨島行き) 貝津教会、淵ノ元カトリック墓碑群、遣唐使空海記念碑
岐宿乗合タクシー
五島市(旧岐宿) 岐宿[五島バス] 唐船之浦
久賀島地区集合タクシー ※現地に、バス標柱はありません。
五島市久賀島 (渡船待合所=)田の浦港(福江・奥浦行き) 旧五輪教会堂、牢屋の窄記念聖堂
奈留バス
→五島市役所
五島市奈留島 (フェリーターミナル=)奈留港(福江・長崎行き) 江上天主堂、汐池ラグーン、奈留高校の松任谷由実の歌碑、笠松宏有記念館
奈留島地区乗合タクシー ※要予約 五島市奈留島 (フェリーターミナル=)奈留港
西肥バス
 
新上五島町 奈良尾港(福江・長崎行き)、若松港(福江行き)、(土井ノ浦桟橋=)土井ノ浦港(福江行き)、(郷の首=)郷の首港(福江行き)、(青方港相河ターミナル=)青方港(福江・博多行き)、(有川港ターミナル=)有川港(宇久・小値賀・佐世保行き)、(鯛の浦=)鯛ノ浦港(長崎行き)、(有住=)有住港(崎戸・佐世保行き) 頭ヶ島天主堂、青砂ヶ浦教会、冷水教会、大曽教会、蛤浜、奈良尾温泉、日島の野生鹿
新上五島町営バス(旧若松町営バス) 新上五島町(旧若松町) 西肥バスに委譲されました。
新上五島町乗合タクシー(新上五島町デマンド交通) ※要予約 ※現在、時刻情報はありません。 新上五島町(旧奈良尾町、旧若松町) 若松地区…若松港ターミナル[西肥バス]、奈良尾地区…奈良尾[西肥バス]
小値賀交通
→小値賀町役場
小値賀町(小値賀島) 小値賀港(五島・博多行き)、(離島待合所=)笛吹港(大島・六島・野崎島行き)、(柳波止場=)柳港(宇久島(神浦)・納島行き) おぢかアイランドツーリズム、斑(まだら)のポットホール、旧野首天主堂(野崎島)、長崎鼻
宇久観光バス
→宇久町観光協会
佐世保市宇久島 (宇久ターミナル=)宇久平港(佐世保・有川行き)、(神浦=)神浦港(寺島・小値賀(柳港)行き) 対馬瀬灯台、浜方ふれあい館

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